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楔形文字の書き方と方向

楔形文字は、先端を斜めに切った葦(あし)の茎(尖筆、スタイラス)を湿った粘土板に押し付けて書かれる。筆で線を「描く」のではなく、尖筆の角を粘土に「押し込む」ことで、断面が三角形の楔(くさび)状の跡が残る。この基本動作の組み合わせだけで、数百種類の楔形文字記号がすべて構成されている。

楔の種類 特徴
横楔 尖筆を水平に押し込んで作る、横方向の楔
縦楔 尖筆を垂直に押し込んで作る、縦方向の楔
斜め楔 斜め方向に押し込んで作る楔
ウィンケルハーケン(山形楔) 尖筆の角を垂直に突き刺して作る、数字の「10」などに使われる小さな山形の跡

初期(紀元前3千年紀前半まで)の楔形文字は、記号を上から下へ並べた「欄(column)」を、右から左へ配置して読む形式だった。しかし紀元前2600年頃以降、書字方向全体が反時計回りに90度回転し、記号を左から右へ、行を上から下へ並べる、現在私たちが目にする楔形文字の配置に変わった。これは、書記官が板を横向きに持ち替えて書く方が効率的だったためと考えられている。

この回転の結果、初期の絵文字的な記号(元は縦向きだった)は、後代の楔形文字ではすべて90度横倒しになった形で伝わっている。たとえば元は牛の頭を縦に描いた絵文字だった記号も、後代の書体では横倒しの形で現れる。

現在、学習者や研究者が目にする翻字(transliteration)はすべて、この回転後の「左から右・上から下」の方式に基づいている。つまり本記事以降で扱う例文や表はすべて、通常のアルファベットの読み方と同じ左から右の順で読めばよい。

ニン

💬 学びのコラム:牛の頭が横倒しになったワケ

ニン:ねえエン、昔の牛の頭の絵文字、今の楔形文字だと横倒しになってるって本当?

エン:本当だよ。紀元前2600年頃、書記官たちが板を横に持ち替えて書くようになって、文字の向きごと90度回転しちゃったんだ。

ニン:それって、私たちが寝転がってスマホを横向きに持つのと同じ感覚かな。

エン:近いね。だから今読む楔形文字の牛の頭は、みんな「あくび」してるみたいに横向きなんだよ。