サンスクリット語の数詞
サンスクリット語の数詞は、名詞・形容詞と同じく性・格変化を行うが、その変化パターンは数によってかなり異なる振る舞いを見せる。この記事では基数詞1〜10を中心に、それぞれがどのように格変化するか(あるいはしないか)を確認し、続いて序数詞の作り方を扱う。
基数詞1〜10
Section titled “基数詞1〜10”| 数 | 語 | 備考 |
|---|---|---|
| 1 | एक eka | 単数のみ。代名詞的な格変化(tad型の語尾)を一部に持つ |
| 2 | द्वि dvi | 双数のみで変化。性による語形差はわずか |
| 3 | त्रि tri | 複数のみ。性によって語形が大きく異なる |
| 4 | चतुर् catur | 複数のみ。性によって語形が大きく異なる |
| 5 | पञ्च pañca | 複数のみ。性による語形差がない(不変) |
| 6 | षष् ṣaṣ | 複数のみ。性による語形差がない |
| 7 | सप्त sapta | 複数のみ。性による語形差がない |
| 8 | अष्ट aṣṭa | 複数のみ。性による語形差がない |
| 9 | नव nava | 複数のみ。性による語形差がない |
| 10 | दश daśa | 複数のみ。性による語形差がない |
5から10までの数詞は、格変化はするものの性による語形の違いを持たない(男性・女性・中性いずれの名詞を修飾する場合も同じ形を用いる)点で共通している。
eka「1」:単数のみ、部分的に代名詞的
Section titled “eka「1」:単数のみ、部分的に代名詞的”eka「1」は数えられる対象が単数である以上、当然ながら単数でしか用いられない。格変化そのものは名詞のa語幹(男性 eka-、中性 eka-)・ā語幹(女性 ekā-)に近いが、与格・奪格・処格の一部には代名詞の格変化で見た tasmai, tasmāt, tasmin のような代名詞語尾(-smai, -smāt, -sminなど)が用いられることがある。
एकः पुरुषः एकं ग्रामं गच्छति।ekaḥ puruṣaḥ ekaṃ grāmaṃ gacchati.エーカハ プルシャハ エーカン グラーマン ガッチャティ一人-主格(男) 人-主格 一つ-対格(中) 村-対格 彼は行く「一人の人が一つの村へ行く。」dvi「2」:双数のみ
Section titled “dvi「2」:双数のみ”dvi「2」は本質的に双数の意味を持つ語であり、双数変化のみを行う。男性の主格・呼格・対格に dvau、女性・中性に dve という形を取る。
द्वौ बालकौ क्रीडतः।dvau bālakau krīḍataḥ.ドヴォー バーラカウ クリーダタハ二人-主格(男双) 少年-主格双 彼らは遊ぶ「二人の少年が遊ぶ。」tri「3」・catur「4」:複数のみ、性で語形が大きく異なる
Section titled “tri「3」・catur「4」:複数のみ、性で語形が大きく異なる”tri「3」と catur「4」は複数変化のみを行うが、eka・dviとは異なり、性によって語幹の形自体が大きく変わるという際立った特徴を持つ。
| 数 | 男性主格複数 | 女性主格複数 | 中性主格複数 |
|---|---|---|---|
| 3 | त्रयः trayaḥ | तिस्रः tisraḥ | त्रीणि trīṇi |
| 4 | चत्वारः catvāraḥ | चतस्रः catasraḥ | चत्वारि catvāri |
このように女性形(tisraḥ, catasraḥ)が男性・中性形とまったく異なる語幹を持つのは、サンスクリット語の数詞の中でも3と4に特有の現象である。
तिस्रः कन्याः गायन्ति।tisraḥ kanyāḥ gāyanti.ティスラハ カニャーハ ガーヤンティ三人-主格(女) 少女たち-主格 彼女らは歌う「三人の少女が歌う。」11以上の数詞について
Section titled “11以上の数詞について”11から19までの数詞(एकादश ekādaśa「11」など)は独自の複合的な形を取り、20(विंशति viṃśati)、30(त्रिंशत् triṃśat)などの十位の数詞はī語幹・ti語幹の女性名詞として扱われる。100(शत śata)、1000(सहस्र sahasra)は中性名詞として通常の名詞のように格変化する。数が大きくなるにつれて数詞は名詞的な性格を強め、修飾する名詞に対して同格ではなく属格で結びつく傾向が強まる(例:「100人の人」は「人々の100」に近い構造を取ることがある)。
序数詞(「第〜の」を表す語)は基数詞から規則的・半規則的な接尾辞によって作られ、通常の形容詞と同じくa語幹(男性・中性)・ā語幹(女性)で格変化する。
| 基数 | 序数(男性形) | 意味 |
|---|---|---|
| 1 | प्रथम prathama- | 第1の |
| 2 | द्वितीय dvitīya- | 第2の |
| 3 | तृतीय tṛtīya- | 第3の |
| 4 | चतुर्थ caturtha- | 第4の |
| 5 | पञ्चम pañcama- | 第5の |
| 6 | षष्ठ ṣaṣṭha- | 第6の |
| 7 | सप्तम saptama- | 第7の |
| 8 | अष्टम aṣṭama- | 第8の |
| 9 | नवम navama- | 第9の |
| 10 | दशम daśama- | 第10の |
सः प्रथमः पुत्रः।saḥ prathamaḥ putraḥ.サハ プラタマハ プトラハ彼-主格 第一の-主格(男) 息子-主格「彼が最初の息子だ。」序数詞は「1」「2」「3」に対応する prathama-, dvitīya-, tṛtīya- が基数詞 eka, dvi, tri とは語根を共有しない独自の語形である点に注意したい(英語の first, second, third が one, two, three と語根を共有しないのと類似した現象である)。
💬 学びのコラム:「3」だけ女性形が全然違う理由
チャンドラ:ターラー、triの女性主格複数がtrayaḥでもtrīṇiでもなくtisraḥになるのって、なんでこんなに違うんだろう。
ターラー:実はこれ、印欧祖語の段階で女性の数詞3・4がすでに特殊な語幹(*tisres-、*kʷetesres-のような形)を持っていたことの名残なの。ラテン語のtrēs(男女同形)とかとも、たどると同じ起源の語根が関わっているのよ。
チャンドラ:数詞なのに、普通の形容詞よりずっと古い形を残しているんだね。
ターラー:そうなの。数詞は代名詞と同じく日常的に頻繁に使われる基本語彙だから、不規則な古い形がそのまま生き残りやすいのよ。[代名詞の格変化](/sanskrit/grammar/pronoun-declension/)で見たsaḥ・sāの話と似ているでしょう?
理解度チェック
Section titled “理解度チェック”📝 理解度チェック
Q1. 数詞5〜10について正しい説明はどれか。
✅ 正解です!
❌ 不正解です。正解は B「複数のみで用いられ、性による語形の違いを持たない」。
解説:pañca「5」からdaśa「10」までは複数変化のみを行い、男性・女性・中性いずれを修飾する場合も同じ形を用いる。
Q2. eka「1」の格変化について正しい説明はどれか。
✅ 正解です!
❌ 不正解です。正解は A「単数のみで用いられ、一部の格に代名詞語尾(-smai, -smāt, -sminなど)が現れることがある」。
解説:ekaは意味上単数でしか使われず、与格・奪格・処格の一部にtad型の代名詞語尾が現れることがある。
Q3. triとcaturに特有の現象として本文が挙げているものはどれか。
✅ 正解です!
❌ 不正解です。正解は A「女性形(tisraḥ, catasraḥ)が男性・中性形とまったく異なる語幹を持つこと」。
解説:triの女性主格複数tisraḥ、caturの女性主格複数catasraḥは、男性形(trayaḥ, catvāraḥ)・中性形(trīṇi, catvāri)とは大きく異なる語幹を持つ、サンスクリット数詞に特有の現象である。
Q4. 序数詞prathama-「第1の」について正しい説明はどれか。
✅ 正解です!
❌ 不正解です。正解は A「基数詞ekaとは語根を共有しない独自の語形であり、通常の形容詞と同じくa語幹・ā語幹で格変化する」。
解説:prathama-はekaと語根を共有しない独自の語であり(英語のfirstがoneと語根を共有しないのと類似)、通常の形容詞と同じくa語幹(男性・中性)・ā語幹(女性)で格変化する。
Q5. 100(śata)や1000(sahasra)といった大きな数詞について本文が述べていることはどれか。
✅ 正解です!
❌ 不正解です。正解は A「中性名詞として通常の名詞のように格変化する」。
解説:本文は100(śata)や1000(sahasra)が中性名詞として通常の名詞のように格変化し、数が大きくなるほど数詞が名詞的性格を強めると説明している。