シュメール語の能格・絶対格
能格言語とは
Section titled “能格言語とは”シュメール語は「能格言語(ergative language)」に分類される。英語や日本語のような主格・対格言語とは異なり、動詞の項の標示が「他動詞の主語(動作主)」と「自動詞の主語/他動詞の目的語」とで異なる体系を持つ。
能格 (-e) と絶対格 (無標)
Section titled “能格 (-e) と絶対格 (無標)”| 格 | 標識 | カタカナ読み | 用法 |
|---|---|---|---|
| 絶対格 | 無標(∅) | (読まない) | 自動詞の主語、他動詞の目的語 |
| 能格 | -e |
エ | 他動詞の主語(動作主) |
lugal-e e2 mu-du3ルガル・エ エ ム・ドゥ王-能格 家 彼が建てた「王が家を建てた」lugal(王)は他動詞 du3(建てる)の動作主なので、能格接尾辞 -e が付く。一方 e2(家)は目的語であり、絶対格(無標)のままである。
💬 学びのコラム:主語なのに形が変わる不思議
ニン:エン、`lugal-e e2 mu-du3` の `lugal-e` って、主語なのに `-e` が付いてる。日本語や英語の主語には、こんな印は要らないよね?
エン:そこがシュメール語の面白いところなんだ。「自動詞の主語」と「他動詞の目的語」は無印のまま、「他動詞の主語」だけに特別な印 `-e` が付く。これが能格言語。
ニン:実は能格言語って、バスク語やチベット語などにも見られる、世界的には珍しくない仕組みなんだって。
エン:英語や日本語の感覚をいったん忘れると、能格の「動作主だけに印をつける」考え方はむしろ合理的に思えてくるよ。