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人称接尾代名詞

古エジプト語には、名詞・前置詞・動詞に直接付いて人称(「私」「あなた」「彼」など)を表す一群の代名詞がある。これを人称接尾代名詞(suffix pronoun)と呼ぶ。独立した単語ではなく、必ず何らかの語の後ろに付属する点が特徴で、慣習的に等号(=)を使って本体の語と区切って表記する。

人称 接尾辞 カタカナ読み
1人称単数 =j イ
2人称単数・男性 =k ク
2人称単数・女性 =ṯ チュ
3人称単数・男性 =f フ
3人称単数・女性 =s ス
1人称複数 =n ン
2人称複数 =ṯn チェン
3人称複数 =sn セン

(このほかに2人称・3人称の双数形 =ṯny/=sny も存在するが、使用例は比較的少ないため、ここでは代表的な単数・複数の8形をまず押さえておこう。)

Table 1の単子音記号にはこれらすべての子音(j, k, ṯ, f, s, n, ṯn, sn)が含まれているため、どの接尾辞も音声どおりに綴ることができる。

用法1:名詞に付けて所有を表す

Section titled “用法1:名詞に付けて所有を表す”

接尾代名詞を名詞に直接付けると、「私の」「彼の」のような所有表現になる。「家」を意味する pr を例に見てみよう。

𓊪𓂋𓆑

pr=f
プル・エフ
家=彼の
「彼の家」

𓊪𓂋𓇋

pr=j
プル・イ
家=私の
「私の家」

接尾代名詞は前置詞にも付き、「〜へ」「〜のために」のような表現を作る。属格・与格的な意味を持つ前置詞 n「〜へ、〜のために」を例にとる。

𓈖𓆑

n=f
ン・エフ
〜へ=彼
「彼へ、彼のために」

用法3:動詞に付けて主語を表す

Section titled “用法3:動詞に付けて主語を表す”

接尾代名詞のもっとも重要な用法のひとつは、動詞に直接付いて主語を示すことである。動詞語根 sḏm「聞く」を例にとろう。

𓋴𓆓𓅓𓆑

sḏm=f
セジェム・エフ
聞く=彼
「彼は聞く」(動詞語根 sḏm + 主語を示す接尾代名詞 =f)

この sḏm=f という形は、エジプト学でそのままの名前として使われるほど重要な動詞形で、独立した記事(sḏm=f形:古エジプト語動詞の基本形)で詳しく扱う。ここでは、接尾代名詞が動詞の主語を表す働きを持つことをまず理解しておこう。

ラー

💬 学びのコラム:たった一文字で「私の」「彼の」を言い分ける

ラー:マアト、pr=j と pr=f、たった一文字違うだけで「私の家」と「彼の家」になるんだね。

マアト:そう、接尾代名詞は名詞にも前置詞にも動詞にもくっつく、すごく働き者の仕組みなの。しかも同じ =f が sḏm=f のように動詞に付くと、今度は「彼が聞く」の主語になるのよ。

ラー:え、同じ =f が「彼の」にも「彼が」にもなるの?

マアト:付く相手によって役割が変わるだけで、形はいつも同じ。だからこそ =j, =k, =f... の8つの形を覚えておけば、名詞にも動詞にも応用できるのよ。

📝 理解度チェック

Q1. 3人称単数・男性を表す接尾代名詞はどれか。

✅ 正解です!

❌ 不正解です。正解は C「=f」。

解説:パラダイム表に「3人称単数・男性|=f」とある。

Q2. 接尾代名詞の特徴として正しいのはどれか。

✅ 正解です!

❌ 不正解です。正解は B「独立した単語ではなく、必ず他の語に付属する」。

解説:接尾代名詞は独立した単語ではなく、必ず何らかの語の後ろに付属すると説明されている。

Q3. pr=j の意味はどれか。

✅ 正解です!

❌ 不正解です。正解は B「私の家」。

解説:pr=j は「家=私の」で「私の家」と説明されている。

Q4. sḏm=f の形態素構造として正しいのはどれか。

✅ 正解です!

❌ 不正解です。正解は A「動詞語根 sḏm(聞く)+ 主語を示す接尾代名詞 =f(彼)」。

解説:sḏm=f は「聞く=彼」で「彼は聞く」と説明され、動詞に付いた接尾代名詞が主語を表す例として挙げられている。

Q5. 2人称複数を表す接尾代名詞はどれか。

✅ 正解です!

❌ 不正解です。正解は B「=ṯn」。

解説:パラダイム表に「2人称複数|=ṯn」とある。