所有人称接尾辞(「私の」「あなたの」を作る接尾辞)
所有を表すもう一つの方法
Section titled “所有を表すもう一つの方法”属格 -akの記事では「名詞+名詞+ -ak」という形で所有関係を表す方法を見た。これとは別に、シュメール語には人称代名詞に対応する「所有人称接尾辞」があり、名詞に直接付けるだけで「私の」「あなたの」のような所有表現を作ることができる。
基本パラダイム
Section titled “基本パラダイム”e2(家)を例に、代表的な所有人称接尾辞を見てみよう。
| 人称 | 接尾辞 | 例 | 楔形文字 | カタカナ読み | 意味 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1人称単数 | -ĝu10 |
e2-ĝu10 | 𒂍𒈬 | エ・グ | 私の家 |
| 2人称単数 | -zu |
e2-zu | 𒂍𒍪 | エ・ズ | あなたの家 |
| 3人称単数(有生) | -a-ni |
e2-a-ni | 𒂍𒀀𒉌 | エ・ア・ニ | 彼/彼女の家 |
| 3人称単数(無生・指示) | -bi |
e2-bi | 𒂍𒁉 | エ・ビ | その家、それの家 |
𒂍𒈬
e2-ĝu10エ・グ家-私の「私の家」𒂍𒀀𒉌
e2-a-niエ・ア・ニ家-彼の「彼の家」3人称単数が2通りに分かれる理由
Section titled “3人称単数が2通りに分かれる理由”3人称単数の所有接尾辞には -a-ni(有生・人格を持つ所有者)と -bi(無生物、または既出の事物への照応)という2つの形がある。-bi はすでに代名詞(人称代名詞・指示代名詞)の記事で「それ」「その」を表す指示・照応語として紹介した語と同じ形であり、シュメール語では無生物の所有者を、人ではなく「それ」を指す指示語で表す発想が反映されている。
動詞の人称接辞との関係
Section titled “動詞の人称接辞との関係”これらの所有人称接尾辞は、人称接辞と動詞の基本構造で見た動詞の人称接辞とは別の体系である。名詞に付く所有接尾辞と、動詞に付く人称接辞は形が異なるため、混同しないよう注意したい。
💬 学びのコラム:「それの」が3人称扱いされる不思議
ニン:`e2-a-ni`(彼の家)と `e2-bi`(その家)……どっちも3人称なのに、形がぜんぜん違うんだね。
エン:そこがポイント。シュメール語は「所有者が人か、それとも物か」で形を分けるんだ。有生の持ち主には `-a-ni`、無生物やすでに話題に出た物には `-bi` を使う。
ニン:日本語だと「彼の家」も「その家の(持ち物)」も同じ「〜の」で済ませちゃうから、この区別は新鮮。
エン:有生・無生を文法の随所で区別するのは、シュメール語らしい発想の一つだね。
理解度チェック
Section titled “理解度チェック”📝 理解度チェック
Q1. `e2-ĝu10` の意味は何か。
✅ 正解です!
❌ 不正解です。正解は B「私の家」。
解説:パラダイム表に「1人称単数|`-ĝu10`|e2-ĝu10|私の家」とある。
Q2. 属格 `-ak` による所有表現([属格 -ak](/sumerian/grammar/genitive-case-ak/)参照)と、本記事の所有人称接尾辞との違いは何か。
✅ 正解です!
❌ 不正解です。正解は B「属格は『名詞+名詞+-ak』の形、所有人称接尾辞は名詞に直接付いて人称代名詞に対応する」。
解説:「『名詞+名詞+ `-ak`』という形で所有関係を表す方法」とは別に「人称代名詞に対応する『所有人称接尾辞』があり、名詞に直接付けるだけで」所有表現を作れると説明されている。
Q3. 3人称単数の所有接尾辞が `-a-ni` と `-bi` の2通りに分かれるのはなぜか。
✅ 正解です!
❌ 不正解です。正解は C「所有者が有生(人)か無生物かの違いによる」。
解説:「`-a-ni`(有生・人格を持つ所有者)と `-bi`(無生物、または既出の事物への照応)という2つの形がある」と説明されている。
Q4. `-bi` はこれまでの記事のどの語と同じ形か。
✅ 正解です!
❌ 不正解です。正解は C「『それ』『その』を表す指示・照応語の `bi`」。
解説:「`-bi` はすでに……『それ』『その』を表す指示・照応語として紹介した語と同じ形であり」と説明されている。
Q5. 所有人称接尾辞と、動詞に付く人称接辞との関係について本文は何と述べているか。
✅ 正解です!
❌ 不正解です。正解は A「別の体系であり、形が異なるため混同しないよう注意すべきだ」。
解説:「これらの所有人称接尾辞は……動詞の人称接辞とは別の体系である。名詞に付く所有接尾辞と、動詞に付く人称接辞は形が異なるため、混同しないよう注意したい」とある。