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翻字の規則:エジプト学翻字とマヌエル・ド・コダージュ

翻字(transliteration)とは、ヒエログリフの各記号が表す子音を、ラテン文字(およびいくつかの特殊記号)に置き換えて示したものである。「単子音記号:ヒエログリフの「アルファベット」24字」で見た24字は、そのままエジプト学翻字で使われる文字の集合と一致する。

エジプト学翻字のアルファベット

Section titled “エジプト学翻字のアルファベット”
翻字文字 発音の目安(慣習的)
ꜣ アレフに似た音(通説では声門閉鎖音的または声門摩擦音的な子音)
ꜥ アイン(通説では咽頭音的な子音)
j イ
y イ(ꜣ ꜥ と同様に半母音的な役割も担う)
w ウ
b ブ行
p プ行
f フ行
m ム行
n ン、ヌ行
r ル行
h ハ行(無声声門摩擦音)
ḥ ハ行(強い無声咽頭摩擦音)
ḫ ハ行(無声軟口蓋・口蓋垂摩擦音)
ẖ ハ行(無声硬口蓋摩擦音)
z / s サ行
š シャ行
q カ行(口蓋垂音)
k カ行(軟口蓋音)
g ガ行
t タ行
ṯ チャ行
d ダ行
ḏ ヂャ行

これらの記号のうち、ḥ・ḫ・ẖ のように「ハ行」に分類される音が複数ある点や、q・k・g のようにいずれも「カ・ガ行」に近い音が複数ある点に注意したい。これは、エジプト語が現代の日本語や英語よりも多くの子音の区別(特に喉の奥で調音される音)を持っていたためである。

上の表を見て気づく重要な点は、母音を表す文字が一切含まれていないことである。これは「ヒエログリフとは何か」で説明したとおり、ヒエログリフの表音文字が子音(と半母音)しか書き表さないためである。したがって翻字もまた、原則として子音の並びのみを示すものであり、実際にどのような母音で発音されていたかは翻字だけからは分からない。この点については「古エジプト語の子音体系と再建音価」で詳しく扱う。

マヌエル・ド・コダージュ(MdC):デジタル入力用の表記法

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ꜣ・ꜥ・ḥ・ḫ・ẖ・š・ṯ・ḏ のような特殊記号は、通常のキーボードでは直接入力できない。そこでエジプト学の分野では、コンピュータ上でヒエログリフのテキストを扱うために、**マヌエル・ド・コダージュ(Manuel de Codage、通称MdC)**と呼ばれるASCII文字だけで翻字を表現する取り決めが1980年代に定められ、広く使われている。たとえば、ꜣ を数字の 3、ꜥ を o、ḥ を大文字 H、ḫ を大文字 X のように、特殊記号を通常のアルファベットや数字に置き換えて表記する。この方式のおかげで、専門的なフォントやUnicode入力環境がなくても、研究者同士がメールやデータベース上でエジプト語の翻字を正確にやり取りできるようになった。現在では多くのヒエログリフ入力ソフトウェアやオンライン辞書がMdC形式の入力を受け付けている。

ラー

💬 学びのコラム:キーボードにない文字をどう打つ?

ラー:マアト、ꜣ とか ḥ みたいな記号、ふつうのキーボードじゃ打てないよね。研究者はどうしてるの?

マアト:そこで登場するのがマヌエル・ド・コダージュ、略してMdCよ。ꜣ を数字の3、ḥ を大文字のHのように、普通のアルファベットと数字だけで表す約束事なの。

ラー:まるで昔のケータイで顔文字を打つときの工夫みたいだね。

マアト:近いかも。1980年代に決まった取り決めだけど、今でもヒエログリフ入力ソフトや辞書データベースで広く使われているのよ。

📝 理解度チェック

Q1. エジプト学翻字とはどのようなものか?

✅ 正解です!

❌ 不正解です。正解は B「ヒエログリフの各記号が表す子音を、ラテン文字と特殊記号に置き換えて示したもの」。

解説:翻字は、ヒエログリフの各記号が表す子音を、ラテン文字といくつかの特殊記号に置き換えて示したものである。

Q2. エジプト学翻字のアルファベットについて正しいのはどれか?

✅ 正解です!

❌ 不正解です。正解は B「母音を表す文字が一切含まれていない」。

解説:ヒエログリフの表音文字が子音(と半母音)しか書き表さないため、翻字にも母音を表す文字は含まれていない。

Q3. ḥ・ḫ・ẖ の3つの記号について本文が説明していることは何か?

✅ 正解です!

❌ 不正解です。正解は B「いずれも「ハ行」に近いが、それぞれ異なる子音を区別して表す」。

解説:ḥ・ḫ・ẖ はいずれも「ハ行」に分類される音だが、エジプト語が喉の奥で調音される音を複数区別していたため、それぞれ異なる子音を表す。

Q4. マヌエル・ド・コダージュ(MdC)とは何か?

✅ 正解です!

❌ 不正解です。正解は B「特殊記号をASCII文字だけで表現する、デジタル入力用の翻字表記法」。

解説:マヌエル・ド・コダージュ(MdC)は、ꜣやḥのような特殊記号をASCII文字だけで表現する、1980年代に定められた取り決めである。

Q5. MdCにおいて ḥ はどのように表記されると本文で紹介されているか?

✅ 正解です!

❌ 不正解です。正解は C「大文字の H」。

解説:本文の例では、MdCにおいて ḥ は大文字の H として表記されると説明している。