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文頭接続詞 nu・ta・šu

文と文をつなぐ「土台」としての接続詞

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接語代名詞連鎖で見たとおり、ヒッタイト語の文には、後続する接語群を文頭に固定する「土台」の役割を果たす文頭接続詞がしばしば現れる。その代表格が nu・ta・šu の3つである。これらはいずれも先行する文脈と後続の文をゆるやかに結びつける、「そして」に近い意味を持つ接続小詞である。

接続詞 おおまかな意味 使用の傾向
nu 「そして」「それで」 時代を問わず広く使われ、後代(新ヒッタイト語)になるほど使用頻度が高まる
ta 「そして」「それから」 特に古ヒッタイト語の物語文で好んで使われる
šu 「そして」 出現頻度が低く、特定の文脈・時代に限られる

これら3つの接続詞は意味の上ではいずれも「そして」に近く、厳密な意味の違いを一つに絞り込むことは難しい。むしろ、どの接続詞が選ばれるかは、文体・ジャンル・成立時代によって左右される傾向が強いとされる。

nu-za URU-an ḫar-ni-ik-ta
ヌザ・ウルアン・ハルニクタ
そして-(再帰)都市(対格)滅ぼす-3単過
「そして彼はその都市を滅ぼした」
ta LUGAL-uš pa-a-it
タ・ルガルウシュ・パーイト
そして・王(主格)行く-3単過
「そして王は行った」

いずれの例も、文頭の接続詞(nu, ta)が後続の要素(再帰小詞 -za、あるいは主語の LUGAL-uš「王」)を導き、文全体の構文的な出発点として機能していることがわかる。

古ヒッタイト語の物語文(『アニッタ文書』など)では ta が頻繁に用いられるのに対し、新ヒッタイト語の文書では nu がほぼ標準的な接続詞として定着し、ta の使用は相対的に減少する。šu はいずれの段階でもさほど高頻度ではなく、特定の文脈に偏って現れる。このような接続詞の使用頻度の変遷は、時代区分に基づいてテキストの成立年代を推定する際の手がかりの一つともなっている。

タルフンナ

💬 学びのコラム:「そして」にも流行があった

タルフンナ:ウルシェム、昔の物語ではtaがよく使われていたのに、後の時代の文書だとnuばかりになるんだって?

ウルシェム:そうなの。まるで日本語の「そして」が時代によって「それから」や「で」に置き換わっていくような感覚に近いかもしれないわね。

タルフンナ:ということは、文章の中にどの接続詞が多いかを数えるだけで、その文書がだいたいいつ頃書かれたか推測できたりするの?

ウルシェム:ええ、まさにそう。ちょっとした「そして」の使い方の癖が、文書の年代を推定する手がかりになるなんて面白いでしょう。

📝 理解度チェック

Q1. nu・ta・šu に共通するおおまかな意味は何か。

✅ 正解です!

❌ 不正解です。正解は A「「そして」に近い接続の意味」。

解説:nu・ta・šuはいずれも「そして」に近い意味を持つ接続小詞である。

Q2. taが特に好んで使われる傾向があるとされるのはどの段階のテキストか。

✅ 正解です!

❌ 不正解です。正解は A「古ヒッタイト語の物語文」。

解説:taは特に古ヒッタイト語の物語文で好んで使われる傾向がある。

Q3. 新ヒッタイト語の文書でほぼ標準的な接続詞として定着したのはどれか。

✅ 正解です!

❌ 不正解です。正解は A「nu」。

解説:新ヒッタイト語ではnuがほぼ標準的な接続詞として定着し、taの使用は相対的に減少する。

Q4. どの接続詞を選ぶかは主に何によって左右される傾向があるとされるか。

✅ 正解です!

❌ 不正解です。正解は A「文体・ジャンル・成立時代」。

解説:接続詞の選択は厳密な意味の違いよりも文体・ジャンル・成立時代に左右される傾向が強いとされる。

Q5. 接続詞の使用頻度の変遷はどのような用途に利用されるか。

✅ 正解です!

❌ 不正解です。正解は A「テキストの成立年代を推定する手がかり」。

解説:接続詞の使用頻度の変遷はテキストの成立年代を推定する手がかりの一つとなる。