動詞活用:現在体系
動詞語根で見たように、サンスクリット語の各動詞語根は10のガナ(gaṇa、クラス)のいずれかに属し、そのガナごとに決まった方法で現在語幹を作る。この記事ではまず10クラスの全体像を整理し、続いてセマティック活用とアセマティック活用の違い、そして最も基本的な第1類動詞 भू bhū-「なる」の現在時制人称変化を詳しく見る。
10のガナと現在語幹の作り方
Section titled “10のガナと現在語幹の作り方”| ガナ | 名称 | 現在語幹の作り方 | 例(語根→現在語幹) |
|---|---|---|---|
| 第1類 | भ्वादि bhvādi | 語根 + -a-(セマティック) | bhū- → bhava- |
| 第2類 | अदादि adādi | 語根に直接語尾(アセマティック) | ad- → ad- |
| 第3類 | जुहोत्यादि juhotyādi | 語根を重複(畳字)した上で直接語尾(アセマティック) | hu- → juho-/juhu- |
| 第4類 | दिवादि divādi | 語根 + -ya-(セマティック) | div- → dīvya- |
| 第5類 | स्वादि svādi | 語根 + -no-/-nu-(アセマティック) | su- → suno-/sunu- |
| 第6類 | तुदादि tudādi | 語根 + -a-(アクセント位置が第1類と異なるセマティック) | tud- → tuda- |
| 第7類 | रुधादि rudhādi | 語根の中に -na-/-n- を挿入(アセマティック) | rudh- → ruṇadh-/rundh- |
| 第8類 | तनादि tanādi | 語根 + -o-/-u-(アセマティック、第5類に類似) | tan- → tano-/tanu- |
| 第9類 | क्र्यादि kryādi | 語根 + -nā-/-nī-(アセマティック) | krī- → krīṇā-/krīṇī- |
| 第10類 | चुरादि curādi | 語根 + -aya-(セマティック) | cur- → coraya- |
セマティック活用とアセマティック活用
Section titled “セマティック活用とアセマティック活用”10クラスは大きく2つのグループに分けられる。
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セマティック(thematic)活用(第1・4・6・10類):語根と人称語尾の間に必ず母音 -a-(テーマ母音)が挟まる。この -a- のおかげで人称語尾自体は全クラス共通の単純な形になり、語根と語尾の境目でのサンディ(連声)も比較的単純になる。
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アセマティック(athematic)活用(第2・3・5・7・8・9類):語根(または語根に接辞を加えた語幹)に人称語尾が直接付く。テーマ母音がないため、語幹末の音と語尾頭の音が直接接触し、複雑なサンディが生じやすい。またこれらのクラスの多くは、単数と複数・双数とで語幹の形が異なる強語幹・弱語幹の交替を示す(例:第2類の語根 as-「ある」は、3人称単数では強語幹を保つ asti「彼はある」だが、3人称複数では弱語幹に縮まった santi「彼らはある」のように、強語幹asと弱語幹sが交替する)。
セマティック活用はテーマ母音のおかげで規則性が高く、初学者はまず第1類(bhvādi)から学び始めるのが一般的である。
第1類動詞 bhavati「なる」の現在時制
Section titled “第1類動詞 bhavati「なる」の現在時制”第1類動詞の代表として、語根 भू bhū-「なる、ある」から作られる現在語幹 bhava- の並立行(パラスマイパダ、能動態)の人称変化を示す。
| 人称・数 | 形 | 分析 |
|---|---|---|
| 1人称単数 | भवामि bhavāmi | bhava- + -āmi |
| 2人称単数 | भवसि bhavasi | bhava- + -si |
| 3人称単数 | भवति bhavati | bhava- + -ti |
| 1人称双数 | भवावः bhavāvaḥ | bhava- + -āvaḥ |
| 2人称双数 | भवथः bhavathaḥ | bhava- + -athaḥ |
| 3人称双数 | भवतः bhavataḥ | bhava- + -ataḥ |
| 1人称複数 | भवामः bhavāmaḥ | bhava- + -āmaḥ |
| 2人称複数 | भवथ bhavatha | bhava- + -atha |
| 3人称複数 | भवन्ति bhavanti | bhava- + -anti |
सः भवति।saḥ bhavati.サハ バヴァティ彼-主格 彼はなる(ある)「彼は存在する。/彼は〜になる。」वयं मित्राणि भवामः।vayaṃ mitrāṇi bhavāmaḥ.ヴァヤン ミトラーニ バヴァーマハ私たちは 友人たち-主格 私たちはなる「私たちは友人になる。」त्वं कदा गृहं गच्छसि?tvaṃ kadā gṛhaṃ gacchasi?トヴァン カダー グリハン ガッチャシあなたは いつ 家-対格 あなたは行く「あなたはいつ家へ行くのですか。」3つ目の例文の gacchasi は同じセマティック活用(第1類)の動詞 gam-「行く」(現在語幹 gaccha-)の2人称単数形で、bhavasi とまったく同じ語尾 -si を取っていることが確認できる。このように、セマティック動詞は語根が異なっても人称語尾のパターンが共通しているため、一度覚えれば応用が利きやすい。
💬 学びのコラム:10クラスもあるって覚えられるの?
ターラー:チャンドラ、動詞のクラスが10個もあるって聞いて最初は怖気づいたわ。
チャンドラ:でも実際には、動詞の語彙の中で圧倒的に多いのは第1類(bhvādi)と第10類(curādi)、それに第4類・第6類あたりなんだ。しかも第1・4・6・10類はどれもテーマ母音を持つセマティック活用だから、人称語尾のパターンはほぼ共通しているんだよ。
ターラー:じゃあアセマティックな第2・3・5・7・8・9類は少数派なのね。
チャンドラ:その通り。特に第8類なんて、事実上kṛ-「する」というたった1つのよく使われる語根のためにあるようなクラスだと言われるくらいだよ。だから最初はbhū-型の活用をしっかり覚えれば、動詞の大半をカバーできるんだ。
理解度チェック
Section titled “理解度チェック”📝 理解度チェック
Q1. セマティック活用の特徴として正しいものはどれか。
✅ 正解です!
❌ 不正解です。正解は A「語根と人称語尾の間に母音-a-(テーマ母音)が挟まる」。
解説:セマティック活用(第1・4・6・10類)は語根と人称語尾の間にテーマ母音-a-を挟む点が特徴で、これにより人称語尾がクラス間で共通した単純な形になる。
Q2. bhavati「彼はなる」の3人称単数語尾はどれか。
✅ 正解です!
❌ 不正解です。正解は C「-ti」。
解説:bhavatiはbhava-(現在語幹)+ -ti(3人称単数語尾)という構成である。
Q3. アセマティック活用の動詞に見られる特徴として本文が挙げているものはどれか。
✅ 正解です!
❌ 不正解です。正解は A「単数と複数・双数とで語幹の形が異なる強語幹・弱語幹の交替」。
解説:第2類as-のastiとsantiのように、多くのアセマティック動詞は強語幹・弱語幹の交替を示す。
Q4. 第3類(juhotyādi)の現在語幹の作り方はどれか。
✅ 正解です!
❌ 不正解です。正解は A「語根を重複(畳字)させた上で直接語尾を付ける」。
解説:第3類juhotyādiはhu-→juho-/juhu-のように語根を重複させ、そこに直接語尾を付けるアセマティック活用である。
Q5. コラムでチャンドラが述べている、bhū-型の活用を覚えることの利点はどれか。
✅ 正解です!
❌ 不正解です。正解は A「動詞語彙の中で多数を占める第1・4・6・10類はテーマ母音を持つ活用が共通しているため、動詞の大半をカバーできる」。
解説:チャンドラは、語彙の中で多数を占める第1・4・6・10類が共通のセマティック活用パターンを持つため、bhū-型をしっかり覚えれば動詞の大半に応用できると説明している。