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強変化名詞と弱変化名詞

古ノルド語(および他のゲルマン諸語)の名詞は、語幹の末尾にあった古い接尾辞の種類によって、大きく「強変化(strong declension)」と「弱変化(weak declension)」の2系統に分類される。強変化名詞は格語尾のバリエーションが比較的豊かで格・数による語形変化がはっきり現れるのに対し、弱変化名詞は語幹末尾に n を含む音(n語幹)に由来し、多くの格で同一・類似した語尾(-a, -i, -u など)を取るという特徴がある。この区別は男性・女性・中性いずれの文法性の名詞にも存在する。

男性名詞の比較:armr(強変化)と goði(弱変化)

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armr(腕)は強変化のa語幹名詞、goði(首長・祭司)は弱変化のn語幹名詞である。

armr(強変化)単数 armr 複数 goði(弱変化)単数 goði 複数
主格 armr armar goði goðar
対格 arm arma goða goða
属格 arms arma goða goða
与格 armi örmum goða goðum

弱変化名詞 goði は対格・属格・与格の単数形がいずれも goða と同形になる点が特徴的で、強変化名詞よりも語形の区別がやや少ない。

女性名詞の比較:gjǫf(強変化)と saga(弱変化)

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女性名詞にも同様の対立が見られる。gjǫf(贈り物)は強変化のō語幹名詞、saga(物語、サガ)は弱変化のn語幹名詞である。

gjǫf(強変化)単数 gjǫf 複数 saga(弱変化)単数 saga 複数
主格 gjǫf gjafar saga sögur
対格 gjöf gjafar sögu sögur
属格 gjafar gjafa sögu sagna
与格 gjöf gjöfum sögu sögum

saga(サガ、物語)という単語自体が弱変化女性名詞の例になっているのは興味深い点である。「サガ文学」という現代の呼び名は、この単語がそのまま英語や日本語に借用されたものである。

中性名詞にも弱変化はあるが数は少ない

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中性名詞の大多数は強変化(a語幹)だが、auga(目)のような一部の身体部位名詞は弱変化(n語幹)を取る。auga の複数形は augu となり、現代アイスランド語にもこの不規則性が受け継がれている。

弱変化名詞かどうかを見分ける最も簡単な手がかりは、単数主格の語尾である。

文法性 強変化の典型的な主格語尾 弱変化の典型的な主格語尾
男性 -r(例: armr) -i(例: goði)
女性 無語尾または -r(例: gjǫf) -a(例: saga)
中性 無語尾(例: land) -a(例: auga)
オーディン

💬 学びのコラム:「サガ」自身が弱変化名詞

オーディン:フレイヤ、実は "saga"(サガ)という単語自体が弱変化女性名詞の見本になっているの知ってた?

フレイヤ:へえ、じゃあ『ニャールのサガ』を古ノルド語のまま格変化させると、たとえば「サガについて」なら属格の *sögu* を使うってこと?

オーディン:その通り。しかも複数形が *sögur* になるのもおもしろいところ。弱変化のn語幹由来のパターンが、母音交替を伴いながら現れているんだ。

フレイヤ:身近な単語ほど文法の実例として覚えやすいものね。「サガ=弱変化女性名詞」、これは忘れなさそう。