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ヒッタイト語とは何か

天候神タルフンナ 太陽女神ウルシェム

ようこそ、PaleoLinguaへ!

これから タルフンナ(Tarḫunna=天候神)くんと ウルシェム(Wurušemu=アリンナの太陽女神)さんが、各記事の最後で「学びのコラム」としてヒッタイト語のちょっとした豆知識をおしゃべりします。タルフンナはヒッタイト神話の主神で嵐と雷を司る神、ウルシェムは国家の守護女神として王権を支えた最高位の女神です。ふたりの名前は、ヒッタイトの神々の世界観を知るうえでも欠かせない存在です。

ヒッタイト語(Hittite)は、現存する文献の中でインド・ヨーロッパ語族の言語として最も古い時代の姿を伝える言語である。紀元前2千年紀の中央アナトリア(現在のトルコ中部)で、ヒッタイト王国の公用語として楔形文字で記録された。

項目 内容
話された地域 中央アナトリア(現トルコ中部)。首都ハットゥシャ(現ボアズキョイ/ボアズカレ)
文字記録の期間 前17世紀頃〜前1180年頃(ヒッタイト王国の滅亡まで)
系統 インド・ヨーロッパ語族アナトリア語派(現存最古の枝分かれ)
文字 楔形文字(メソポタミアから借用した音節文字+シュメログラム・アッカドグラム)
基本語順 SOV(主語-目的語-動詞)が基本だが、文頭に接続詞+接語代名詞連鎖が置かれる
文法類型 2性(有生/共通性・中性)、2種類の動詞活用(mi活用・hi活用)、格変化に能格的な中性主語標示を持つ
発見・解読 1906年以降ハットゥシャで大量の粘土板文書が発掘され、1915年にチェコの学者ベドジフ・フロズニーがインド・ヨーロッパ語族の言語であることを立証した

アナトリア語派とインド・ヨーロッパ語族

Section titled “アナトリア語派とインド・ヨーロッパ語族”

ヒッタイト語は、ルウィ語・パライ語・リュキア語・リディア語・カリア語などとともに、インド・ヨーロッパ語族のアナトリア語派を構成する。アナトリア語派はインド・ヨーロッパ祖語から最も早い段階で分岐した枝と考えられており、この考えは「インド・ヒッタイト仮説」(Indo-Hittite hypothesis、E. Sturtevant提唱)とも呼ばれる。ヒッタイト語には、印欧祖語の音韻を再建するうえで決定的な手がかりとなった特徴がある。それが喉音(ḫ音)の直接的な文字表記であり、19世紀末にソシュールが理論的に予言した「喉音理論」を裏づける実例として言語学史上きわめて重要な位置を占める。

ヒッタイト語の文献は、文法・書記法の特徴に応じて3段階に区分される。

段階 おおよその時期 特徴
古ヒッタイト語(Old Hittite) 前17世紀〜前15世紀頃 『アニッタ文書』など最古期の文書。後代の写本を通じて伝わることが多い
中ヒッタイト語(Middle Hittite) 前15世紀〜前14世紀頃 過渡期。文法・正書法の変化が進行中
新(後期)ヒッタイト語(New/Neo-Hittite) 前14世紀〜前13世紀頃 帝国最盛期の文書。現存する写本の多くがこの段階の言語を反映する

ヒッタイト語は独自の文字を持たず、メソポタミアの楔形文字を借用して表記された。これはシュメール語・アッカド語に由来する音節文字体系に加え、シュメログラム・アッカドグラムと呼ばれる借用表語文字を多用する点が特徴で、アッカド語の楔形文字運用をほぼそのまま継承しつつ、独自のインド・ヨーロッパ語族の言語を書き表す工夫が随所に見られる。

ハットゥシャの王宮文書庫跡から出土した数万点の粘土板断片には、王の年代記・条約文書(隣国との条約を含む)、ヒッタイト法典、儀礼文書、神話(イルヤンカ神話など)、祈祷文(疫病の祈りなど)が含まれる。これらは粘土板という耐久性の高い媒体に刻まれたため、火災で宮殿が焼け落ちた際にかえって「焼成」されて保存状態が良くなったという幸運な経緯がある。

タルフンナ

💬 学びのコラム:一番「年上」のインド・ヨーロッパ語

タルフンナ:ウルシェム、ぼくたちの言葉って、ラテン語やサンスクリット語よりもっと古いって知ってた?

ウルシェム:ええ、知ってるわ。文字に残った証拠としては、インド・ヨーロッパ語族の中でいちばん古い姿を伝えているのがヒッタイト語なのよね。

タルフンナ:しかも、ぼくたちの ḫ の音が、大昔の学者が「きっとあったはずだ」と理屈だけで予言していた音を裏づける証拠になったんだって。

ウルシェム:まさに「言葉の化石」ね。粘土板が火事でカチカチに焼き固まったおかげで、何千年も残ったのも面白い偶然よ。

📝 理解度チェック

Q1. ヒッタイト語はインド・ヨーロッパ語族の中でどのような位置づけを持つか。

✅ 正解です!

❌ 不正解です。正解は B「現存文献としては最も古い姿を伝えるアナトリア語派の言語」。

解説:ヒッタイト語はアナトリア語派に属し、インド・ヨーロッパ語族の言語の中で文献上最も古い段階を伝えている。

Q2. ヒッタイト語がインド・ヨーロッパ語族の言語であることを1915年に立証した学者は誰か。

✅ 正解です!

❌ 不正解です。正解は B「ベドジフ・フロズニー」。

解説:チェコの学者ベドジフ・フロズニーが1915年にヒッタイト語をインド・ヨーロッパ語族の言語として立証した。

Q3. ヒッタイト語の文字について正しい説明はどれか。

✅ 正解です!

❌ 不正解です。正解は B「メソポタミア由来の楔形文字を借用し、シュメログラム・アッカドグラムも多用する」。

解説:ヒッタイト語はメソポタミアの楔形文字を借用して表記され、シュメログラム・アッカドグラムと呼ばれる借用表語文字も多用する。

Q4. ヒッタイト語の ḫ 音が言語学史上重要とされる理由は何か。

✅ 正解です!

❌ 不正解です。正解は B「ソシュールが理論的に予言した喉音理論を裏づける直接的な文字証拠となったから」。

解説:ヒッタイト語の ḫ の文字表記は、印欧祖語に喉音があったとするソシュールの理論を裏づける実例として重要視されている。

Q5. ヒッタイト語の粘土板文書が良好な状態で現代まで残った理由として本文が挙げているのはどれか。

✅ 正解です!

❌ 不正解です。正解は B「宮殿の火災によって粘土板が焼成され、かえって保存状態が良くなったから」。

解説:粘土板は火災で焼き固まることで耐久性が増し、数千年後まで良好な状態で残った。