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マルー形とハムトゥ形(動詞のアスペクト)

2つの動詞語幹:ハムトゥとマルー

Section titled “2つの動詞語幹:ハムトゥとマルー”

シュメール語の動詞は、時制(過去・現在・未来)そのものよりも、動作の完了性・持続性という「アスペクト(相)」を軸に語幹が2種類に分かれる。伝統的にアッカド語由来の用語で、それぞれ「ハムトゥ(ḫamṭu、“速い”の意)」と「マルー(marû、“太った・ゆっくりした”の意)」と呼ばれる。

語幹 おおまかな意味 訳の目安
ハムトゥ形 完了的・単発的な出来事 「〜した」(過去的)
マルー形 未完了的・持続的・反復的な出来事 「〜している」「〜するだろう」(現在・未来的)

多くの動詞では、ハムトゥ形とマルー形は接辞の付け方だけが異なるが、頻度の高い基本動詞の中には、語根そのものが入れ替わる(補充法)ものがある。その代表例が「行く」という動詞である。

アスペクト 語幹 楔形文字 カタカナ読み
ハムトゥ形(「行った」) ĝen 𒁺 ゲン
マルー形(「行く・行っている」) du 𒁺 ドゥ

ĝen と du は語根としては見た目も由来も別物だが、興味深いことに、実際の楔形文字では両方とも同じ DU の記号 𒁺 で書かれ、読み分けは文脈に委ねられる。

𒂍𒂠 𒄿𒁺

e2-še3 i3-ĝen
エ・シェ イ・ゲン
家-終端格 彼が行った
「彼は家へ行った」(ハムトゥ形)

マルー形とハムトゥ形の区別は、動詞に付く人称接辞や接頭辞の現れ方にも影響するため、シュメール語の動詞体系全体を理解する上での土台となる。初学者の段階では、まず「シュメール語の動詞には完了的な形(ハムトゥ)と未完了的な形(マルー)という、語幹そのものが変わりうる2つの姿がある」という事実を押さえておけば十分である。

エン

💬 学びのコラム:「行く」と「go」、実は仲間

エン:ニン、`ĝen`(行った)と `du`(行く)が全然違う形なのって変じゃない?

ニン:あ、それ英語にもあるよね。"go" の過去形は "goed" じゃなくて "went"。語根がまるごと入れ替わる「補充法」ってやつでしょ?

エン:そう、まさにそれ! 日常でよく使う動詞ほど、不規則な特別扱いを受けやすいのは、シュメール語も英語も同じなんだね。

ニン:言語って違っても、よく使う言葉ほど「特別ルール」になりがちなのは人間共通の癖なのかも。

📝 理解度チェック

Q1. アッカド語由来の用語「ハムトゥ」「マルー」は、それぞれ元々どういう意味か。

✅ 正解です!

❌ 不正解です。正解は C「「速い」と「太った・ゆっくりした」」。

解説:本文に「ハムトゥ(ḫamṭu、"速い"の意)」「マルー(marû、"太った・ゆっくりした"の意)」と説明されている。

Q2. ハムトゥ形が表すアスペクトはどれか。

✅ 正解です!

❌ 不正解です。正解は B「完了的・単発的な出来事(「〜した」)」。

解説:表に「ハムトゥ形|完了的・単発的な出来事|「〜した」(過去的)」とある。

Q3. マルー形が表すアスペクトはどれか。

✅ 正解です!

❌ 不正解です。正解は D「未完了的・持続的・反復的な出来事(「〜している」「〜するだろう」)」。

解説:表に「マルー形|未完了的・持続的・反復的な出来事|「〜している」「〜するだろう」(現在・未来的)」とある。

Q4. 動詞「行く」のハムトゥ形 `ĝen` とマルー形 `du` について、本文が指摘している特異な点は何か。

✅ 正解です!

❌ 不正解です。正解は A「接辞の違いではなく、語根そのものが入れ替わる補充法である」。

解説:本文に「頻度の高い基本動詞の中には、語根そのものが入れ替わる(補充法)ものがある。その代表例が『行く』という動詞である」とある。

Q5. 本文によれば、`ĝen` と `du` は実際の楔形文字ではどのように書き分けられているか。

✅ 正解です!

❌ 不正解です。正解は B「両方とも同じDUの記号で書かれ、読み分けは文脈に委ねられる」。

解説:本文に「実際の楔形文字では両方とも同じ DU の記号 𒁺 で書かれ、読み分けは文脈に委ねられる」とある。