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ルーン碑文の読み方

現代の文字と異なり、ルーン碑文の読字方向は一定していない。左から右へ読むものが最も多いが、右から左へ読むもの、さらには行ごとに方向を反転させる「牛耕式(boustrophedon、「牛が畑を耕すように」の意)」も見られる。牛耕式では偶数行の文字が鏡文字(左右反転した字形)で刻まれることが多く、初見では読みにくい。石碑の場合、文字列が石の縁に沿って蛇行するように配置されることもあり、どこが文頭かを図像(蛇や竜の意匠)から判断する必要がある例も多い。

現代の分かち書きに相当する慣習として、単語の間に点(·)や、縦に並んだ複数の点(:)を置くことがある。ただし全ての碑文で一貫して使われるわけではなく、区切りなしで文字が連続する碑文も多い。その場合、読み手は語彙知識と文脈から単語の切れ目を推測する必要がある。

raisti · stain · þana

上の例は「この石を建てた」という定型句を、点で単語を区切って示したものである。

連結ルーン(バインドルーン, bandrún)

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2つ以上のルーンが縦棒(幹)を共有する形で1つの合字にまとめられることがあり、これを**連結ルーン(バインドルーン)**と呼ぶ。彫る手間を省く、あるいは装飾的効果を狙うために使われたと考えられている。たとえば ᛘ (m) と ᛅ (a) はいずれも縦棒を持つため、幹を共有させて1つの合字として刻むことができる。連結ルーンは特に石工の署名や、限られた面積に多くの文字を収める必要がある場面で好まれた。

ヴァイキング時代のルーン石碑には、後述の記事で詳しく扱う通り、次のような定型句が繰り返し現れる。「〈人名A〉が〈人名B〉のために、この石を建てた」という追悼碑文の基本形である。

ルーン列(長枝ルーン) 翻字 逐語グロス
ᛅ ᛋᛅ ᛚᛁᛏ ᚱᛅᛁᛋᛅ ᛋᛏᛅᛁᚾ ᚦᛁᚾᛅ A sa lit raisa stain þina A =〈人名〉が、この石を、建てさせた

lit…raisa は「建てさせた」という使役構文で、後の読解記事「ヴァイキング時代のルーン石碑」で詳しく扱う。)

  • 有声・無声の区別がない:ᛏ は t にも d にも対応するため、stain(石)と書かれていても文脈上 stein と同義の語として読む。
  • 鼻音の脱落表記:鼻音を伴う子音連続が簡略化されて書かれることがある(例:landlant のような綴り)。
  • 多義的な母音字:ᚢ は u, o, y, ø, w のいずれにもなりうるため、既知の語彙と照合しながら読む必要がある。
  • 文字の欠損・摩耗:現存する碑文は風化や破損により一部の文字が判読不能なことが多く、学術版では欠損箇所を角括弧などで示す。
フレイヤ

💬 学びのコラム:牛耕式は牛の気持ちで読む

フレイヤ:オーディン、「牛耕式」の碑文って、1行目は左から右なのに2行目は右から左に戻るのよね?なんだか変な感じ。

オーディン:畑を耕す牛をイメージするとわかりやすいよ。端まで耕したら、わざわざ元の位置まで戻らずにそのまま折り返して次の畝を耕すよね。文字もそれと同じ発想で、行末から折り返して書かれているんだ。

フレイヤ:なるほど、彫る人の手間を省く工夫だったのね。読む側は大変そうだけど。

オーディン:そうだね。だから折り返した行の文字は鏡文字になっていることが多い。初めて見ると面食らうけど、慣れると案外自然に読めるようになるよ。