シュメール語の人名を読む
人名は「文」でできている
Section titled “人名は「文」でできている”シュメール語の人名の多くは、単なる音の組み合わせではなく、それ自体が短い「文」や「句」として意味を持つように作られている。日本語で言えば「〇〇に守られし者」のような命名法に近い。特に、神の名を含む「神名帰属型(theophoric)」の名前が多い。
代表的な人名の構造
Section titled “代表的な人名の構造”| 人名(翻字) | カタカナ読み | 形態素分析(簡略) | おおよその意味 |
|---|---|---|---|
ur-dnamma |
ウル・ナンマ(dは限定符で読まない) |
ur(〜に仕える者、文字通りは「犬」)+ 女神ナンマ | 「ナンマ神に仕える者」 |
| gudea | グデア | gu3-de2-a(「呼ばれた(者)」、索引番号は読まない) | 「(神に)呼ばれし者」 |
| šulgi | シュルギ | šul(若き勇者)+ gi(確かな・忠実な) | 「頼もしき若き勇者」 |
| en-ḫedu2-an-na | エン・ヘドゥ・アンナ | en(女神官長)+ ḫedu2(飾り、索引番号は読まない)+ an(天神アン) | 「天神アンの飾りである女神官長」 |
これらの分析は現代の研究者による標準的な語源解釈に基づくものだが、シュメール語の人名研究では細部について議論が続いている点もあるため、あくまで「おおよその意味」として理解しておきたい。
ur- という要素
Section titled “ur- という要素”ur-(ウル)で始まる名前(ur-dnamma=ウル・ナンマ、ur-dnanše=ウル・ナンシェ など)は非常に多く見られる。ur は文字通りには「犬」を意味するが、人名の中では「〜に仕える者」「〜の従者」という比喩的な意味合いで使われると考えられている。
なぜ人名から読み始めるのか
Section titled “なぜ人名から読み始めるのか”人名は、王碑文・行政文書・法文書などあらゆる種類の文献に繰り返し登場する。その構造(多くは「動詞的な文」または「属格句」)を理解しておくと、属格 -akや動詞の基本構造の知識を、実際の文献を読む際にすぐ活用できるようになる。
💬 学びのコラム:私たちの名前も実は「文」だった
ニン:そういえば、私たちの名前「エン」と「ニン」も、シュメール語ではちゃんと意味のある単語だったよね。
エン:そうそう。`en`(主)と `nin`(女主人)。これだけでも、`en-ḫedu2-an-na`(天神アンの飾りである女神官長)のような実在の人名の一部になれる、由緒ある単語なんだ。
ニン:`ur-` で始まる名前が「〜に仕える者」って意味で、文字通りは「犬」だっていうのも面白いよね。忠犬みたいに神様に仕えるってことなのかな。
エン:そう考えると、シュメール人の名前を読むのは、その人の家族が込めた小さな祈りを読むことでもあるんだ。