テリピヌ王の布告を読む
内乱の時代に発せられた布告
Section titled “内乱の時代に発せられた布告”テリピヌ王の布告は、ヒッタイト古王国末期(前16世紀頃)に王位に就いたテリピヌが発した文書で、王位継承をめぐる暗殺・内紛が相次いだ混乱の時代を収拾するために、明確な継承順位のルールを定めたことで知られる。文書の前半は、初代王ラバルナやハットゥシリ1世の治世を理想的な時代として振り返る歴史的な序文となっており、後半でその教訓をふまえた具体的な規定が示される、という構成を取る。
王位継承順位の規定
Section titled “王位継承順位の規定”布告の中心をなすのが、誰が次の王になるべきかを定めた継承順位の規定である。
以下は、この規定の趣旨を伝える、学習用に単純化した例文である(特定の1行の逐語引用ではなく、規定の内容を要約的に示す文である点に注意されたい)。
DUMU.NÍTA-aš 1-aš LUGAL-uš ki-ša-ruドゥムニータシュ・イアシュ・ルガルウシュ・キシャル息子(主格) 第一の(主格) 王(主格) なれ-命令法3単(中動態)「(王の)第一の息子が王となるように」
ták-ku DUMU.NÍTA-aš 1-aš NU.GÁLタック・ドゥムニータシュ・イアシュ・ヌガルもし 息子 第一の いない「もし第一の息子がいなければ」
nu-za ku-iš DUMU.NÍTA-aš 2-aš LUGAL-uš ki-ša-ruヌザ・クイシュ・ドゥムニータシュ・2アシュ・ルガルウシュ・キシャルそして(再帰) 第二の息子(の中の誰か) 王(主格) なれ-命令法3単「第二の(順位の)息子の誰かが王となるように」「パンク」による裁定
Section titled “「パンク」による裁定”テリピヌの布告のもう一つの重要な柱が、**パンク(panku)**と呼ばれる集会・共同体の制度である。布告は、王族内で流血事件が起きた場合、加害者に対する処罰を被害者の一族が私的に報復するのではなく、パンク(王族・高官からなる合議体)が審議し裁定を下すべきだと定めている。これは、王位継承をめぐる暗殺の連鎖を断ち切ろうとする、当時としては先進的な統治上の工夫と評価されている。
テリピヌの布告は、単なる法律文書としてだけでなく、ヒッタイト王国の初期の歴史(ラバルナ、ハットゥシリ1世、ムルシリ1世らの事績)を伝える貴重な歴史叙述としても評価されている。また、王位継承の明確なルール化とパンクによる裁定制度は、その後のヒッタイト王国の政治体制に長く影響を与えたと考えられている。
💬 学びのコラム:暗殺の連鎖を止めたルールブック
ウルシェム:タルフンナ、テリピヌ王の布告って、まるで「王位継承のルールブック」を初めてちゃんと書いた文書なのよね。
タルフンナ:それまでは決まったルールがなくて、暗殺や内紛が続いていたってこと?
ウルシェム:そうなの。だから「第一の息子が王になれ、いなければ第二の息子」というふうに、順序をはっきり決めたのよ。さらに、身内が誰かを殺しても私刑にせず、パンクという合議体で裁くようにしたの。
タルフンナ:「私的な復讐」から「みんなで話し合って決める」に変えたんだね。統治のしくみを工夫して、争いを止めようとしたんだ。
理解度チェック
Section titled “理解度チェック”📝 理解度チェック
Q1. テリピヌ王の布告が発せられた背景として本文が述べているのはどれか。
✅ 正解です!
❌ 不正解です。正解は A「王位継承をめぐる暗殺・内紛が相次いだ混乱の時代」。
解説:テリピヌの布告は王位継承をめぐる暗殺・内紛の混乱を収拾するために発せられた。
Q2. 布告が定める継承順位の規定の趣旨はどれか。
✅ 正解です!
❌ 不正解です。正解は A「第一の息子が王となり、いなければ第二の順位の息子が王となる」。
解説:布告は第一の息子を優先し、いない場合は第二の順位の息子が王となると定めている。
Q3. パンクとは何か。
✅ 正解です!
❌ 不正解です。正解は A「王族内の流血事件を審議し裁定を下す集会・合議体」。
解説:パンクは王族・高官からなる合議体で、流血事件を審議し裁定を下す制度である。
Q4. パンクによる裁定の導入がどのような統治上の工夫と評価されているか。
✅ 正解です!
❌ 不正解です。正解は A「被害者一族による私的な報復に代えて、合議による裁定を導入し暗殺の連鎖を断ち切ろうとする工夫」。
解説:パンクによる裁定は、私的な報復による暗殺の連鎖を断ち切ろうとする先進的な統治上の工夫と評価されている。
Q5. テリピヌの布告が歴史叙述としても評価される理由は何か。
✅ 正解です!
❌ 不正解です。正解は A「ラバルナやハットゥシリ1世らヒッタイト王国初期の事績を伝えているから」。
解説:布告の前半はラバルナやハットゥシリ1世らの治世を振り返る歴史的な序文となっている。