最初の一文を読む:王の建設碑文
王碑文というジャンル
Section titled “王碑文というジャンル”シュメールの王たちは、神殿や城壁などの建造物を築いた際、その事業を記念する碑文を粘土や石に刻ませた。これらの「王碑文(royal (building) inscription)」は数百年にわたり驚くほど定型化されており、多くが「誰それが、神または王のために、これこれを建てた」という基本構文を繰り返す。この定型性は、初学者が実際の一次資料に近い文を読む練習をするのに最適な題材となる。
以下の例文は、ラガシュのグデアやウルのウル・ナンマなど、複数の王碑文に共通して見られる典型的な言い回しを基に、学習用に単純化したものである(特定の1枚の碑文の逐語引用ではない)。
ur-dnamma lugal-e e2-ninnu mu-du3ウル・ナンマ ルガル・エ エ・ニンヌ ム・ドゥウル・ナンマ 王-能格 エニンヌ神殿 彼が建てた逐語グロス
| 語 | カタカナ読み | 形態素分析 | 意味 |
|---|---|---|---|
ur-dnamma |
ウル・ナンマ(dは限定符で読まない) |
固有名詞 | ウル・ナンマ(人名) |
| lugal-e | ルガル・エ | lugal(王)+ -e(能格) | 王が |
| e2-ninnu | エ・ニンヌ | 固有名詞(神殿名) | エニンヌ(神殿名、「50の家」の意とされる) |
| mu-du3 | ム・ドゥ(索引番号3は読まない) | mu-(求心接頭辞)+ du3(建てる) | 彼が建てた |
日本語訳:「ウル・ナンマ王がエニンヌ神殿を建てた。」 English: “King Ur-Namma built the Eninnu temple.”
文法的な着眼点
Section titled “文法的な着眼点”lugal-eに見られるように、他動詞(du3「建てる」)の主語には能格接尾辞-eが付く(能格・絶対格を参照)。e2-ninnu(目的語)は絶対格であり、格接尾辞を伴わない無標の形で現れる。- 動詞
mu-du3が文末に置かれ、SOV語順の通り、動詞が文を締めくくっている。
💬 学びのコラム:王様たちの「テンプレ文章」
ニン:`ur-dnamma lugal-e e2-ninnu mu-du3` みたいな文、いろんな王碑文で似た形が繰り返し出てくるんだね。
エン:そう、王碑文はかなり「テンプレート化」されていて、「誰それが、これこれを建てた」という骨組みは何百年も使い回されたんだ。
ニン:今で言う、プレスリリースの決まり文句みたいなものかな。「弊社はこのたび〜を発表しました」って感じの。
エン:まさにそれ。定型文だからこそ、初めて原典を読む私たちにとっては、実はいちばん取っつきやすい入り口になるんだよ。