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音節文字としての楔形文字

楔形文字は表語文字(1記号=1単語)だけでなく、音のみを表す音節記号(シラボグラム)を大量に含む混合表記体系である。シュメール語の音節記号は、主に次の3タイプに分類される。

タイプ 構造 例(カタカナ読み)
V 母音のみ a(ア), i(イ), u(ウ)
CV 子音+母音 ba(バ), du(ドゥ), mu(ム), ra(ラ)
VC 母音+子音 ab(アブ), en(エン), ur(ウル)
CVC 子音+母音+子音 dam(ダム), kur(クル), lugal(ルガル)

これらを組み合わせることで、シュメール語の単語や文法接辞を音単位で綴ることができる。

たとえば「子供」を意味する語 dumu は、CV型の音節記号2つ du + mu を並べて du-mu と綴られる(翻字では音節の切れ目をハイフンで示す)。

du-mu
ドゥ・ム
子供

楔形文字の音節記号には、1つの記号が複数の音を表せる「多価性(polyvalence)」と、逆に同じ音を複数の異なる記号が表せる「同音異字(homophony)」という2つの特徴がある。後者を区別するため、学術的翻字では音の後に下付きの索引番号を付ける慣習がある。

翻字表記 カタカナ読み 意味
du ドゥ 索引番号なし=最も基本的・頻用の記号
du3 ドゥ 同じ音 /du/ を表す別の記号(例:動詞「建てる」の語根)
du6 ドゥ 同じ音 /du/ を表すさらに別の記号(例:「(土の)丘」を表す語)

索引番号はあくまで「どの字形を使っているか」を示す学術的な記法であり、発音そのものが異なるわけではない点に注意したい。読み上げるときは番号を無視し、du3du6 もすべて「ドゥ」と読めばよい。同様に、本サイトの例文に頻出する mu-du3(「(彼が)建てた」)は「ム・ドゥ」と読む。

エン

💬 学びのコラム:同じ「du」でも中身は別人

エン:クイズだよ、ニン。`du`・`du3`・`du6` の3つ、発音はぜんぶ同じ「ドゥ」なのに、なぜ番号で区別するでしょう?

ニン:うーん……同じ音を書ける記号が何種類もあるってこと?

エン:正解! `du3` は「建てる」という動詞の語根で、「読解・例文」の記事で出てくる `lugal-e e2 mu-du3`(王が家を建てた)にも使われているんだ。

ニン:じゃあ番号は発音記号じゃなくて、「どの漢字を使うか」を教えてくれる目印みたいなものなんだね。